すずきはるな
suzuki haruna
(学生)




APPLE
N-mark collection2000

名古屋港の倉庫群で
開催予定の展覧会

2000/10/10 〜 10/15

アーティスト
澤登恭子SWANOBORI Kyoko (Tokyo)
木村崇人KIMURA Takahito (Tokyo)
北山美那子KITAYAMA Minako (Nagoya)
高平真帆 TAKAHIRA Maho (Fukuoka)
佐藤優 SATO Yu
(Tokyo)
溝口康彦 MIZOGUCHI Yasuhiko (Nagoya)
小川良子 OGAWA Ryoko
(Nagoya)

 

ビデオプログラム
詳細は会場にて発表

 

[APPLE]
 「りんごが木から落ちる瞬間を見る」という体験。この言葉からして、私にとっては「りんごが木から落ちる」ような新鮮さがあった。いままで、すっかり忘れていたニュートンの重力の発見を、なんとなく思い出しながら、この展覧会を待った。N-markがスペースを手放してから、よく通っていた私にはなんとなく寂しい日々が続き(スタッフの方とは個人的に遊んではいたけれど)、今回のAPPLEでひさびさにあの空気に会えるんだなと、少し緊張していた。N-markに出入りする時は、いつもりんごが木から落ちる事を発見するような状況に出会った。あの神領のスペースで、よく私は個性的な人物達の動きに、「この人は一体何なんだろう」ととにかく観察をしていた。一年前のあの日々を、特集号的に見れるんだな、と緊張しながら港に向った。

 薄暗い倉庫の中で、突拍子もない発想の作品たちは私をくすぐり、そして私を置いてどんどん走っていく。そういう印象を受けた。

 この展覧会に出品している作家の、根底にある考えがストレートに見えてくる気がした。私を含め見る者が、ただ子どものように作家に手をひかれているような感じ。それは、自分の今までの発想の域を越えたところに、作家の考えが回っているため、もしくわ自分のなかで妥協され完結された部分の発想だったからかもしれない。 海水を利用した発電の木村さんの作品は、水戸芸術館でのジャイロにつづき、夏休みの自由研究のような印象がある。そういえば理科で習ったかも…と薄れた記憶を呼び起こして、新しい発見を見る。「芸術と理科」という風に見るのは、まったく乏しい見方か、いや、その乏しい見方を逆手にとっているのか。倉庫で海水の発電をエピソード風にパフォーマンスする様子に、彼の価値観を感じる。

「ノーモーミルク」の北山さんの作品は、耳に残るリズムの歌と、牛乳を飲む姿が忘れられない。床に粉ミルクでの雪印のマークは、9月にあった、雪印の事件を思い出す。事件当日前後の牛乳パックが倉庫の柱の元にきちんと並べられているのを見ると、ワイドショーでの報道が蘇る。パフォーマンスの方は、佐藤さんの花の作品がいい演出になり、効果的であった。北山さんの作品では、毎回演劇・歌などの要素が見られるが、彼女の度胸にはなんとも頭があがらない。彼女がゆずらないクオリティの高さが、見ている者の心を突き抜ける。 高平さんの釣りの本は、私に本って何なんだろうな、と考えさせた。文字が全部白で消されていると、すっかり意味がなくなるのを実感する。それと同時に、写真の強さも感じる。しかし、演出がどうももの足りないのではないか。倉庫のすみっこでの発見は、大きいものであったが、その演出が寂しかった。
 
澤登さんのはちみつなめDJは、作家と出会った印象と、かなりのギャップがある。この人がこんなことするんだと、見てはいけないものを見てしまった気がした。黒い衣装と、露出した肌が悪魔的で、なめているのが密とくれば、いろいろ想像してしまう。それに場所がよかった。また、ライトもよかった。しかし、それを見るのがちょっとごったがえして、見ずらかった。彼女には、女性の恐さを感じる。私も女性なのでなんというか、言葉にはできないけど共感するものがある。それは支配なのか服従なのか、なんだかわからないけれど。

[APPLE]は、そのタイトルをしっかり実現している展覧会であったと感じる。おそらくこの企画者は、「リンゴが木から落ちる瞬間を見た」ことがある人物であったのではないか。その瞬間を知っていて、その瞬間を自らが作り出すことに、純粋になって展覧会を起こしたと考える。実際、この展覧会に来場してそういう発見をした人は、何人いるのだろう。名古屋港でのこの展覧会は、マンネリ化しつつある名古屋のアートシーンにおいて、リンゴが木から落ちる瞬間を与えてくれた新鮮なものであった。

N-markさま、ごくろうさまでした。これからも、りんご見たい。 それと、わたしもりんごを落とせるようになりたいなんて思いました。

名古屋芸術大学3年/すずきはるな

 

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